クロセ家の温熱環境をシミュレーションしてみた②

高気密・高断熱
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前回に引き続き、今回もクロセ家をシミュレーションしていただいた結果をもとに、いろいろと考察してみたいと思います。

今回のシミュレーションもやまのすみか株式会社代表である田上さん(@yamanosumika)に実施いただきました。

では早速、今回のシミュレーションの内容と結果から見ていきましょう。

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絵で見る省エネ診断書の結果

以下が「絵で見る省エネ診断書の結果」の結果です。

今回はクロセの家と、クロセの家にネオマフォーム50mmを付加断熱した時の結果を比較していただきました。

では、項目ごとに細かく見ていきましょう。

プラン比較

まず最初にプランの比較です。

クロセ家の設計は左側付加断熱を追加したプランが右側です。
ネオマフォームを50mm付加しただけですが、これだけでUA値が0.27まで下がっています。
まあ、ネオマフォーム50mmは贅沢な付加断熱ともいえるのですが…

一条工務店のi-smartがUA値0.25(カタログスペック)であることを考えると、かなり高断熱になったことがわかるかなと思います。

右側を見ると、付加断熱によってクロセの家の熱損失量が31%も低減するようなので、冬場の快適性が上がり暖房費も抑えられるでしょう。
また、冷房期の日射熱の取得量も20%も削減されているので、夏場の暑さも改善しています。

ちなみに、右下のグラフはηAC値を比較したものですが、これは冷房期に外壁や窓を通って外から入る単位面積当たりの熱量を示したものです。
ηAC値が小さいほど入る熱量が小さく、冷房がしやすくなります。

ここでいえることは、付加断熱によって大きく冷暖房効率が上がりそうということですね。

UA値の比較

以下の結果はUA値の違いによる、熱損失量を比較した結果です。
灰色がクロセの家、桃色が付加断熱を追加した時の結果です。

右上のグラフを見ると、現在のクロセの家でも断熱等級4よりUA値が低いことがわかりますが、付加断熱をすることでさらに小さくなっています。

そして真ん中のグラフを見てください。
付加断熱によって外壁から逃げる熱量が大幅に減っていることがわかります。

では、前回同様に熱損失量からQ値を計算してみましょう。
上記の結果から付加断熱後の熱損失量は115.7のようですが、換気の分が入っていません。
別のシミュレーション結果から換気による熱損失量は34ということがわかっています。
これを合わせて、付加断熱後の熱損失量は150程度です。

上記を考慮して付加断熱をした時のQ値はQ=150(熱損失量)/119(延床面積)≒1.26
ちなみに付加断熱無しのクロセ家はQ=1.66程度でした。

クロセ家の換気は第1種の熱交換型なのでもう少し低いでしょうが、それでもまだQ1住宅には届かないですね。
屋根断熱の補強と、さらなる付加断熱の強化が必要そうですね。

ちなみに前回は断熱等級4と比較し、その時の結果はこれでした。

せっかくなので熱損失のグラフを組み合わせてみましょう。

左から断熱等級4(橙色)、クロセの家(灰色)、付加断熱追加(桃色)の家になります。
特に外壁では、付加断熱をすることで熱損失量が大きく低減していることがわかりますね。

ηAC値の比較

以下の結果はηAC値の違いによる、日射取得量の比較です。
灰色がクロセの家桃色が付加断熱を追加した時の結果です。

外壁から入る日射量が半分近く減っていることがわかります。
しかしグラフを見ると、熱損失量と比較して開口部から入る日射量が気になります。
暑さを避けるための窓の日射遮蔽がいかに大事かということがよくわかりますね。

あとこの結果を見るまでηAC値にも等級があることが知りませんでした。
6地域の等級4で2.8です。
クロセの家は今の状態でも1.0なので、夏場はかなり快適なように思えます。
窓の外に簾をかけることでさらに快適になりそうですね。

しかしせっかくなのでηAH値も知りたいですね。
どうやったら計算できるのでしょうか?

暖冷房費シミュレーション

以下は暖冷房費をシミュレーションして比較したものです。
灰色がクロセの家/橙色が付加断熱を追加した時の結果です。

橙色が暖房青色が冷房の費用ですね。
ここでも前回同様、暖冷房費は真夏>真冬になっていますね。
ただ前にも言ったとおり、真夏よりも真冬のほうが外気と室温の差が大きくなるはずのため、現実には真冬暖房費のほうが高くなると予想されます。

ちなみに前回のクロセ家と断熱等級4の比較は以下の通りでした。

断熱等級4⇒クロセの家では6万ほど安くなっています。
しかしクロセの家⇒付加断熱追加では3万弱程度の低減です。

性能が良くなるほどコストカットの効果が出にくくなることがわかります。
つまり、コスパが悪くなります。

ただし、快適性には効果がありますので、そこにお金を出せるかという話になります。
子孫に引き継いで何十年も住んでいくならば、その限りではありませんけどね。

こういった高性能の家が長い年月を経ても資産として残るようになれば、売るほうにも買うほうにもメリットが出てくるんですけどね。

そのあたりは国がもっと積極的に介入してほしいですね。

考察

今回もシミュレーション結果から感じたことを書いてみようと思います。

夏の日射遮蔽の重要さ

以下は先ほど見せたηAC値のグラフです。

先ほども申し上げた通り開口部、つまり窓からの日射量が大きいため、夏場はこれを防ぐことがいかに快適性につながるかがよくわかります。

一見すると外壁は4方向あるため、一番日射量が多くないことが不思議に思えます。
しかし、冷静に考えると日射は熱と違って常に四方から入るわけではなく、時間ごとに日射が来る方向が決まっています。

その為、常に四方から逃げる前提の熱損失量に比べると、一定の位置からしか入らない外壁からの日射量は小さいのでしょう。

窓に比べると圧倒的に外壁の面積は大きいわけですが、それでも窓のほうが日射量が大きいです。

ちなみに、京都の夏は最高気温が40℃近くまで上がる地域です。
クロセは日射取得が甘いことを嘆いていましたが、最高気温のことを考えると日射取得が甘くてかえって良かったのかもしれません。

付加断熱追加による冷房費低減効果が薄い

以下は先ほど見せた暖冷房費シミュレーションの結果です。

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は image-49-1024x418.png です

断熱等級4⇒クロセの家の時もそうでしたが、クロセの家⇒付加断熱追加においても夏の冷房費がほとんど下がっていないことがわかります。

これは前回も述べましたが、断熱性能が上がったことにより、入り込んだ熱が逃げにくい状態になっていると考えられます。
また、前回言い忘れましたが、生活で発生する排熱(照明、体温、調理熱など)が逃げにくいというのもあるでしょう。

一方で、冷房の効きやすさ自体は向上しているため、差し引きでは冷房費の低減につながっているのでしょう。

実際には窓の日射遮蔽をしっかりすることで、シミュレーション以上に冷房費の低減が見られると予想しています。

終わりに

今回は付加断熱の効果を数字的に見ていきました。

今のクロセの家は外壁の断熱がちょっと弱いこともあり、熱損失量に対する付加断熱の効果はなかなかに悪くないと感じました。

ただし、シミュレーションの結果では、年間冷暖房費の低減効果は3万程度です。
ネオマフォームの施工費はわかりませんが、30年では元は取れないでしょうね。
40~50年くらいなら取れるかも?

どこかで外壁を補修するタイミングが来るかもしれませんし、その時にでもついでに付加断熱を追加してもいいかもしれませんね。

ていうかしたい!

では。

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